その意味がわかっているのか?
彼女はせせら笑いながら言った。
お前がやってきたすべての行動が、今の状況をつくりだしたんだ。
「アンタを見てるとムカつくよ。いい人ぶっちゃってさ。お前の中身があたしにはわからないんだ。だからムカつく。さらけ出せよ。お前の本性を見せろ。怪物のくせに。いい人ぶって近づくんじゃねえ」
どうせならその牙で、噛み付いてみせろ。
彼女の声が、指先が、視線が、挑発する。
理性を飛ばせ。リミッターを外せ。いい子ちゃんでいることがカッコイイとでも思ってるのか?
お前はただのどうしようもないクズだ。かっこよくなんてない。使い潰されて死ぬんだ。傷つけた女に恨まれて、殺される。それでいいのか? それがお前が望む姿か? 誰に飼い慣らされた? 誰に牙を抜かれたんだ? なあヘタレ野郎、吠えてみせろ。喰い殺せよ。さあやれ。思いのままに行動しろ。さあ、さあ、さあ、
うるせェ、と絞り出した言葉に、彼女はぽかんと固まって、それからゲラゲラと笑った。
情けない声出すんじゃねえよ、彼女はただそれだけ言って、俺を見て、俺を見てから目を細めた。
「お前のかわいこちゃんたちは実に生ぬるい」
と、唐突に彼女はそう言った。見上げればその先で、そいつはため息をつく。
「本当にわかってるのか? あいつらはぽやぽやした見た目でお前を騙してる。可愛くて純粋で無邪気ないきものなんてどこにもいない! お前はあいつらに利用されてるんだ。恐ろしくいい子で、平和な、ただなんでもない毎日に幸せを見出すようなシナリオで、誰が満足するっていうんだ? お前はモンスターなんだぞ!」
「俺が望んだわけじゃない」
「そんなことはどうだっていい!!」
ぽつりとつぶやいた俺の小さな抵抗に、彼女が大声で怒鳴る。乱れた髪をかきあげて、乱暴に彼女は笑った。悪い顔。醜い欲望に歪んだその表情が、彼女らしいその顔が一番きれいだとも思う。
結果としてお前は世のはみ出し者なんだ、と彼女は一呼吸置いてから続けた。恐怖の対象。自由気ままで本能のままに生きる。それがどんなに魅力的で素晴らしいことか、お前はなんにもわかってない。ろくでなしめ。無駄に生きるんじゃねェ。お前がご立派に我慢することが、誰かを救うことになるとでも思ってるのか?
「お前は誰も救えやしねェよ、ハチル。お前自身もだ」
「俺が救われないのはわかってる」
「へえ、じゃあ、あの銀色の小さな恋人は?」
諦めきれねェクセに。知らないとでも思ったか? 忌々しそうに彼女は噛み付いた。確かに彼女の言うとおりだ。ツユキを巻き込むとわかっていながら、それでも俺はあの子を諦めきれない。俺の身勝手なエゴだ。でもそれを認めたくなくて、俺はイラついて彼女を見上げる。
「何がいいたい」
「あの子がお前にとってどれほど大事なのか…相変わらずいつものお遊びなのか、それとも本気であの子を大事に思ってるのか、お前の頭の中なんざよくわからねェが…」
「これ以上お前がいい子を演じ続けるならアタシにだって手はあるぞ。お前の本性晒してやる。アタシがお前をモンスターにしてやる。あの小さな可愛いリヴリーちゃんを、自分が幸せだって信じて疑わないムカつくちっぽけないきものを、そのきれいな手でどうやって壊せばいいか、アタシがちゃんと教えてやるよ」
見上げた先で、彼女が笑う。
俺の目を見て、彼女の声はある種の軽蔑を込めたような声色になった。
賢いアタシのハチルちゃんには、それがどういう意味か分かるよな?
彼女は笑いながら俺を見下ろした。
彼女のヒールが床を蹴った。
胸ぐらをつかまれて、強い力で引き寄せられる。
噛み付くような乱暴なキスは、あぁ、間違いない、あの頃の彼女と同じ。
「ハチル、お前を、幸せになんかさせない」
吐息混じりにつぶやかれる呪いの言葉。俺の全てを縛りあげる彼女の愛。
何度も何度も繰り返される、俺と彼女をつなぐ唯一の呪い。
「絶対に、させないから」
なすがままの俺に、その細い腕で乱暴に呪いを打ち込んで、彼女はまた唇を塞いだ。
彼女はせせら笑いながら言った。
お前がやってきたすべての行動が、今の状況をつくりだしたんだ。
「アンタを見てるとムカつくよ。いい人ぶっちゃってさ。お前の中身があたしにはわからないんだ。だからムカつく。さらけ出せよ。お前の本性を見せろ。怪物のくせに。いい人ぶって近づくんじゃねえ」
どうせならその牙で、噛み付いてみせろ。
彼女の声が、指先が、視線が、挑発する。
理性を飛ばせ。リミッターを外せ。いい子ちゃんでいることがカッコイイとでも思ってるのか?
お前はただのどうしようもないクズだ。かっこよくなんてない。使い潰されて死ぬんだ。傷つけた女に恨まれて、殺される。それでいいのか? それがお前が望む姿か? 誰に飼い慣らされた? 誰に牙を抜かれたんだ? なあヘタレ野郎、吠えてみせろ。喰い殺せよ。さあやれ。思いのままに行動しろ。さあ、さあ、さあ、
うるせェ、と絞り出した言葉に、彼女はぽかんと固まって、それからゲラゲラと笑った。
情けない声出すんじゃねえよ、彼女はただそれだけ言って、俺を見て、俺を見てから目を細めた。
「お前のかわいこちゃんたちは実に生ぬるい」
と、唐突に彼女はそう言った。見上げればその先で、そいつはため息をつく。
「本当にわかってるのか? あいつらはぽやぽやした見た目でお前を騙してる。可愛くて純粋で無邪気ないきものなんてどこにもいない! お前はあいつらに利用されてるんだ。恐ろしくいい子で、平和な、ただなんでもない毎日に幸せを見出すようなシナリオで、誰が満足するっていうんだ? お前はモンスターなんだぞ!」
「俺が望んだわけじゃない」
「そんなことはどうだっていい!!」
ぽつりとつぶやいた俺の小さな抵抗に、彼女が大声で怒鳴る。乱れた髪をかきあげて、乱暴に彼女は笑った。悪い顔。醜い欲望に歪んだその表情が、彼女らしいその顔が一番きれいだとも思う。
結果としてお前は世のはみ出し者なんだ、と彼女は一呼吸置いてから続けた。恐怖の対象。自由気ままで本能のままに生きる。それがどんなに魅力的で素晴らしいことか、お前はなんにもわかってない。ろくでなしめ。無駄に生きるんじゃねェ。お前がご立派に我慢することが、誰かを救うことになるとでも思ってるのか?
「お前は誰も救えやしねェよ、ハチル。お前自身もだ」
「俺が救われないのはわかってる」
「へえ、じゃあ、あの銀色の小さな恋人は?」
諦めきれねェクセに。知らないとでも思ったか? 忌々しそうに彼女は噛み付いた。確かに彼女の言うとおりだ。ツユキを巻き込むとわかっていながら、それでも俺はあの子を諦めきれない。俺の身勝手なエゴだ。でもそれを認めたくなくて、俺はイラついて彼女を見上げる。
「何がいいたい」
「あの子がお前にとってどれほど大事なのか…相変わらずいつものお遊びなのか、それとも本気であの子を大事に思ってるのか、お前の頭の中なんざよくわからねェが…」
「これ以上お前がいい子を演じ続けるならアタシにだって手はあるぞ。お前の本性晒してやる。アタシがお前をモンスターにしてやる。あの小さな可愛いリヴリーちゃんを、自分が幸せだって信じて疑わないムカつくちっぽけないきものを、そのきれいな手でどうやって壊せばいいか、アタシがちゃんと教えてやるよ」
見上げた先で、彼女が笑う。
俺の目を見て、彼女の声はある種の軽蔑を込めたような声色になった。
賢いアタシのハチルちゃんには、それがどういう意味か分かるよな?
彼女は笑いながら俺を見下ろした。
彼女のヒールが床を蹴った。
胸ぐらをつかまれて、強い力で引き寄せられる。
噛み付くような乱暴なキスは、あぁ、間違いない、あの頃の彼女と同じ。
「ハチル、お前を、幸せになんかさせない」
吐息混じりにつぶやかれる呪いの言葉。俺の全てを縛りあげる彼女の愛。
何度も何度も繰り返される、俺と彼女をつなぐ唯一の呪い。
「絶対に、させないから」
なすがままの俺に、その細い腕で乱暴に呪いを打ち込んで、彼女はまた唇を塞いだ。
2013/12/03(Tue)
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