何もかもが思い通りにはならないらしい。
息を吸って、吐いて、灰色の溜息を抱えて、わたしは空を見上げた。
ろくでもない街に暮らす、残念な脳味噌と、愚かな心臓を持った、かわいそうな女。
だれがそんなやつを救ってくれるだろう。
忌々しい南風が生暖かく、伸びすぎた髪を舐めていく。
ただムカついたのだ。
それが全てじゃないか。
なんだか訳の分からない言葉の羅列を並べ立て、理論的に見せようとはしているけど結局、これは、曖昧で、あまりにも主観的で、感覚的な、抽象概念の話だ。はっきりとした強い意味も持たず、意志も持たず、ムカつくほど生暖かい南風に鳥肌を立てる女の脳内に浮かんでは消える記号の組み合わせにすぎない。
意味はなく、価値もない。
そこに漂うのは虚無感と倦怠感と空虚感。廃墟と呼ぶには蒸し暑すぎて、真夏の熱帯夜に見るおぼろげな夢と形容するのにはロマンチックさが足りない。
自動筆記という文章の組み立て方を、いつだかどこかで誰かが考えだした。頭に浮かんだ言葉を順序立てることもせずただ思いついた順にすべて記録する。それが現実の脳の使い方として最も自然で、それが超自然主義、シュルレアリスム的だという芸術概念だ。
わたしがするこの無意味な行動に意味を見出そうとは思わないしよもやこれが超自然主義の流れを受け継いだ断固たる芸術行動だとは誰も思わない。これはただの戯言。兎にも角にも世に戯言の多きなり。ああ、鳥が鳴いてる。
話の発端は何か?
哀れな女だ。
何故哀れなのか?
彼に捨てられたから。
オイオイ、またかよ。
うんざり。脳内で誰かがあくびをする。フェンスを掴んで下を覗けば、遥か下方で人々がまるで小さなアリみたいに一生懸命歩き回っているのが見える。
誰かがこっちを観た?
ヒロイックな妄想に取りつかれたりするのは映画の中のヒステリーな女だけで十分。
肩にかけていた通学カバンを放り投げ、わたしはフェンスの傍の段差を一段登った。
風は相変わらず生ぬるい。
「ファッション自殺だ」
彼の声が後ろで笑う。
「自分を手っ取り早く昇華させる方法」
黙っててよ。
振り返れば、鮮やか過ぎる青が、わたしの目を射抜いた。
「どうせ大したこと無い。お前の存在に価値がないように、お前の死には価値がない」
「うるさい」
「何度目だ?こうやってリハーサルして、シュミレーションして、また明日も死ぬのか」
「うるさいよ」
風は生ぬるい。
気色悪い。
空は灰色で、彼だけが青く、笑っている。
飛んでやる。明日もあさっても、何度でも。
彼の言うとおり、わたしの死には価値がないから。
だからわたしは何度だって死ぬ。
自動筆記の追随。緑色のフェンス。網目。自分の指。彼の青。冷たい色。ろくでなしめ。
空は灰色で、風は生暖かい。
ただムカついたのだ。
それだけのことだ。
息を吸って、吐いて、灰色の溜息を抱えて、わたしは空を見上げた。
ろくでもない街に暮らす、残念な脳味噌と、愚かな心臓を持った、かわいそうな女。
だれがそんなやつを救ってくれるだろう。
忌々しい南風が生暖かく、伸びすぎた髪を舐めていく。
ただムカついたのだ。
それが全てじゃないか。
なんだか訳の分からない言葉の羅列を並べ立て、理論的に見せようとはしているけど結局、これは、曖昧で、あまりにも主観的で、感覚的な、抽象概念の話だ。はっきりとした強い意味も持たず、意志も持たず、ムカつくほど生暖かい南風に鳥肌を立てる女の脳内に浮かんでは消える記号の組み合わせにすぎない。
意味はなく、価値もない。
そこに漂うのは虚無感と倦怠感と空虚感。廃墟と呼ぶには蒸し暑すぎて、真夏の熱帯夜に見るおぼろげな夢と形容するのにはロマンチックさが足りない。
自動筆記という文章の組み立て方を、いつだかどこかで誰かが考えだした。頭に浮かんだ言葉を順序立てることもせずただ思いついた順にすべて記録する。それが現実の脳の使い方として最も自然で、それが超自然主義、シュルレアリスム的だという芸術概念だ。
わたしがするこの無意味な行動に意味を見出そうとは思わないしよもやこれが超自然主義の流れを受け継いだ断固たる芸術行動だとは誰も思わない。これはただの戯言。兎にも角にも世に戯言の多きなり。ああ、鳥が鳴いてる。
話の発端は何か?
哀れな女だ。
何故哀れなのか?
彼に捨てられたから。
オイオイ、またかよ。
うんざり。脳内で誰かがあくびをする。フェンスを掴んで下を覗けば、遥か下方で人々がまるで小さなアリみたいに一生懸命歩き回っているのが見える。
誰かがこっちを観た?
ヒロイックな妄想に取りつかれたりするのは映画の中のヒステリーな女だけで十分。
肩にかけていた通学カバンを放り投げ、わたしはフェンスの傍の段差を一段登った。
風は相変わらず生ぬるい。
「ファッション自殺だ」
彼の声が後ろで笑う。
「自分を手っ取り早く昇華させる方法」
黙っててよ。
振り返れば、鮮やか過ぎる青が、わたしの目を射抜いた。
「どうせ大したこと無い。お前の存在に価値がないように、お前の死には価値がない」
「うるさい」
「何度目だ?こうやってリハーサルして、シュミレーションして、また明日も死ぬのか」
「うるさいよ」
風は生ぬるい。
気色悪い。
空は灰色で、彼だけが青く、笑っている。
飛んでやる。明日もあさっても、何度でも。
彼の言うとおり、わたしの死には価値がないから。
だからわたしは何度だって死ぬ。
自動筆記の追随。緑色のフェンス。網目。自分の指。彼の青。冷たい色。ろくでなしめ。
空は灰色で、風は生暖かい。
ただムカついたのだ。
それだけのことだ。
2014/06/04(Wed)
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